モノクロ写真

昔、東京で働いていた頃のことだが、メトロの駅にとあるポスターが貼られていた。
メトロの自社広告なのだが、いくつかのバリエーションがあり、
どのポスターも古き良き時代の都内の写真が大きくトリミングされ、

「山や川があるところだけが、ふるさとじゃない」

というコピーが添えられていた。

そのポスターを見た日の数日後、夕方会社からコンビニに買い物に出かけた。
コンビニまでは一本道なのだが、道の途中に古い石段があり、てっぺんに中学生ぐらいの女の子二人が座っていた。
部活帰りだろうか、ジャージ姿で笑って楽しそうに話していて、それを見て「彼女達にはこれはなんてことない日常の一コマなんだろうな」と思った。
僕はここを職場としてしか考えていなかったが、彼女達にとってはここがふるさとなのだ。
僕の中で、ちょっとその石段を見る目が変わった。
カメラを持っていなくてその写真は撮ることができなかった(ケータイで撮ったら通報されただろうし)。*1

*1:いや、おばあちゃんなら構わないと言っているわけじゃないんだからねっ