2016-01-01から1年間の記事一覧

命日に

子供時代の兄妹の写真を観ていたら、ふと思い出したことがあった。あの子は今、どうしてるだろうなと考えた。 - その場にいた喪服の人たちの中で、地味だが色つきのワンピースを着ているその子の姿は目を惹いた。年の頃は3〜4歳だろうか。おそらく妹の友達の…

大丈夫だよ

これは昔、幼稚園を不安がる子どものために家内が髪留めゴムに描いたお守りだ。 「だいじょうぶ」と書いてある。「だいじょうぶ、こわくないよ」なのか。 「だいじょうぶ、あなたなら」なのか。 「だいじょうぶ。いざとなったら母が出るから」もあるかもしれ…

最期の笑顔

突然の訃報で、急遽葬儀に参列した。 あまり縁の深い間柄の方ではなかったが、生前の話はよく聞いていた。一言で言えば、「生き尽くした」人生だったと思う。 最期も、そんな風に思える笑顔だった。どうか安らかに。 そしてどうか、あちらでも旅を続けてくだ…

流星

ひどかった週末も終わって、ベランダでタバコを吸っていた。 煙を追って見上げた先に夜空が見えた。毎晩夜更かししてた高校生の時、母が夜中に「流星が見えるんだって」と僕を連れ出して、二人でベランダで流星群を見た。あれから二十年以上経ち、あの家はも…

喪失の存在

今日、妹のお墓ができたと母から連絡があった。いよいよ家から彼女が出て行く日がきた。 嫁いで出てゆき、亡くなってまた出て行く。二度出て行く妹を、母たちはどんな思いで見送るのだろうと考えた。僕はもう妹の死を乗り越えた、自分は立ち直ったと思ってい…