理由

少年期に、「自分はどうして自分に生まれてきたんだろう」という疑問を持った。
大人になったら答えが見つかるだろうと思っていたのだが、答えは出なかった。
そして親になった。疑問に答えが出ないまま同じ疑問を子供に与えることになったわけだ。
たが、一つ変わったことがある。今まではずっと子供の視点から自分が自分である意味を考えていた。
しかし、僕は自力で選んで自分に生まれついたわけではない。僕をこの世に誕生させたのは、他ならぬ僕の両親である。自分に子供ができて、そこに気が付いた。親の視点から、子供を見ることができるようになった。
そして思った。僕はこの子に僕のところに来て欲しかったんだ、と。
僕の両親もきっとそう考えたはずだ。
自分が自分で生まれてきた理由は、両親が僕を望んだからだ、と考えると、僕でいるのも悪くない。そう思えた。