「分かっている」が「解っていない」 〜なぜマンホールのフタは円形なのか〜

twitterで、ある企業の面接で「なぜマンホールのフタは円形なのか」という質問が出たというPOSTを見た。
この問題自体は僕も聞いたことがあり、答えも知っている。
が、これが「企業の面接で質問された」場合、正しく答えられるかというと、かなり怪しいことに気が付いた。

面「では最後の質問です。マンホールのフタが丸いのは何故だと思いますか?」
僕「…え?はいはいはい。それはですね、四角だとこう(両手で空中に四角を描く)で、フタがこう(片手で手刀を作る)で、こう(手刀をさっき描いた四角に向けて斜めに傾けながら)なってずれたら穴に落ちる(手刀を足元に向けて落とす)じゃないですか。私はそのようにお考えをお持ちになっております」

こんな感じだろう。
図としては頭に浮かぶが、言語化ができていない。
改めて言語で説明するにはどう言えばいいか考えてみた。

「四角だと辺より対角線が長くなってしまうので、フタの角度によっては穴に落ちてしまう。円だと直径は常に一定なのでどの角度でも落ちない」

これでいいだろうか。
いや、「フタの角度によっては」という言い回しは曖昧でダメだ。
だってフタを水平にしたまま回してもフタは落ちることはない(紙を2枚使って試してみた)。

実際に紙を使って再現してみると、フタが穴に落ちる(重みでズリズリ落ちていくのではなく、手を離したらまっさかさまに落ちる)条件というのは、
1.フタが水平方向に回転してフタの辺が穴の対角線より短くなる(既出)
2.フタが垂直方向に回転して穴の面積より小さくなっている
ということになる。

あれ、変だな。
「フタが水平方向に回転してフタの辺が穴の対角線より短くなる」と書いたが、回転しようがしまいが元々フタの辺は穴の対角線(=フタの対角線)より短いのだ。これは説明としておかしい。
2も、この条件だとフタが円の場合も成立する。

「落ちる」条件の立て方が間違っているのか。

それよりそもそも「落ちる」ってなんだろう。
「落ちる」とはフタの支えがなくなる(無力化する)ということだ。では穴がフタを支えているというのはどういう状況だろうと考えると、「フタが穴のふちに接地」しているということだ
(ここで気が付いたのは、実際は穴の面積よりフタは若干大きくなっているということだ。だから穴がフタを支えているのではなく、穴のふちがフタを支えているということになる)
そうすると「落ちる」とは「フタのふちにフタが接地できない状態」と定義できる。

これを用い、落ちる条件を再定義してみる。
1.フタが水平方向に回転してフタの辺が穴の対角線より短くなり、フタのふちに接地できる箇所がなくなる
2.フタが垂直方向に回転してフタのふちに接地できる箇所がなくなる
(2は明らかに苦しい)

そうすると答えは
「四角だと辺より対角線が長くなってしまうので、フタが垂直、水平方向に回転するとフタのふちに接地できる箇所が無くなり、フタが穴に落ちてしまう。円だと直径は常に一定なのでどの角度でも落ちない」
ということになる。

もうこれでいい。