スパシーボ、プラシーボ
中島らもの小説『超老伝』で、こんなくだりがあった。
(貧しくてご飯もおかずも買えず、袋ラーメンだけで食いつないでいる家庭の話。だんだんラーメンだけの食生活に飽きてきた)
袋ラーメン3つ(みそ・しお・しょうゆ)を作り、ドンブリ3つを目の前に置いて、
しょうゆラーメンに向かって「君は、ごはんだっ!」
しおラーメンに向かって「君は、おかずだっ!」
みそラーメンに向かって「君は、みそ汁だっ!」
と言ってから、それらを交互に食べる。
なんとなく頭の中ではつじつまが合っているらしい。
これを医学用語ではプラシーボ効果という(違う?)。
先週末、いつものように遅くまで仕事してから帰宅した。
疲れ切ってさて飯にしようと思ったところ、晩酌用のお酒がないことに気が付いた。
がっかりした。
お酒だけを楽しみに頑張っていたのに…
しかし買いに出るのも面倒なので、何かないかと探していたら。あった。
シャンメリーだ(クリスマスの残り)。
とりあえずそれを目の前に置いて、
「君は、ドンペリだっ!」
と言って飲んでみた。
気が抜けて咳止めシロップみたいになっていたが、少し酔ったような気がした。
なんでも前向きに考えてみるものであるな、と思った。
『超老伝』は、中島らものエンタメ性が凝縮された作品だ。
僕ももう何度読んだか覚えていない。
- 作者: 中島らも
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1993/03
- メディア: 文庫
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