行動規範を持つということ

ノル森が話題になっている。
…自分で後から読み返して意味が分からなくなるとアレなので補足すると、「ノルウェイの森」のことだ。

原作は説明が不要な大ベストセラーであるが、最近映画が公開された。松山ケンイチが主人公のワタナベを演じている。僕は観ていないが、Twitterで芸術家の村上隆氏が同作品の技法を読み解く一連のツイートをして以来、僕のTLでは反響が大きい(あくまで僕のTL上なので、実際の動員数がどうなのかはよく分からない)。

僕は原作を高校生の時に読んだ。確か当時で300万部を超え、社会現象になっていた。
村上春樹作品はこれが初めてだったのだが、田舎の純朴な高校生だった僕には刺激が強い作品だった。

作中に永沢さんという人物が出てくる。
この人のせりふには名言が多いが、当時僕が特に気に入ったのは、

(貴方は理想というものは持ってないんでしょうというワタナベの問いかけに対し)
「人生にはそんなもの必要ないんだ。必要なものは理想ではなく行動規範だ」

というものだ。
後年僕はハードボイルドをよく読むようになるが、この考え方はまさにハードボイルドの主人公のそれである。

当時、じゃあ自分はどうか、そんなものを持っているのかと考えてみた。
一つだけ思い当ったのだが、その時僕が明確に行動規範として持っていたものは、

字牌が一枚ずつあってどれを捨てるか迷ったら「東南西北白撥中」の順番で切れ

というものだけだった。
これも、中学の時に読んだ麻雀の教本に書いてあったアドバイスである。
永沢さんの規範に比べるとショボすぎる
実にショボい。

だが、上記の言葉には「そうしたらいいことがある」というなんらかの根拠があるわけではないが、これはこれで使いでがあるということは当時から分かっていた。
それは、

「そう決めておくことによって迷わなくて済む」

ということで、これは実はすごく重要なことだ。迷わなくて済むというだけにとどまらず、規範に従ったという理由があれば決断の結果が失敗に終わっても切り替えがしやすい。
この麻雀牌の切り方の規範を自分に設けることにより「日頃何事においても規範を決めておくとその場に臨んだ時に決断を早くできる」ということを学んだ。

とはいっても、「強くなければ生きていけない」みたいな抽象的な規範を掲げても仕方がないので、できるだけ日常に落とし込んだ規範を持ちたいのだが、人生そんなに型が決まったシチュエーションが多いわけではない。
なので僕が今明確に規範として持っているのは次のことぐらいだ。

電車で席を譲る優先順位は、妊婦さん>足を怪我した人>おばあさん>小さい子連れのママ>おじいさん>他

(おばあさん、おじいさんは僕の主観で判断する)

ただしおじいさんはスーツを着ていれば年齢に関わらず現役とみなす。その場合逆に譲ることが失礼に当たると考えるので譲らない。
この程度のことだが、これはこれで持っていると便利だ。

しかし改めて書いてみるともうちょっと教育方針とか、ビジネスにおいてとか、そういうことがないもんだろうか。