すばらしい

印刷は人間の目の錯覚を利用した技術である

ということを社会人になりたての頃に勉強のために読んだ本で知った。
技術的な内容なのだが、とても感銘を受けたのを覚えている。
今日、網点を見ていてそのことを思い出した。

考えてみると、日常的に五感が受ける刺激には錯覚も多く混ざっている。 錯覚は意思の力で押さえることは難しい。同級生の K君が小学生の時に匂い付き消しゴムを食べたのもそのせいだと言えるだろう。

そういう僕も同じことをやった。
小学校の時、通学路でキンモクセイの香りを嗅ぐのが好きだった。ある日、うちのトイレの芳香剤がキンモクセイの香りになり、思わずふたを開けて中のペーストを名札に塗りたくり、これでいつでもキンモクセイの香りが楽しめると一人悦に入ったことがある。

揺れる吊り橋の上に男女を立たせる。すると吊り橋の揺れる恐怖から来る鼓動を、恋愛感情から来る鼓動と勘違いしてお互いを好きになってしまうのだそうだ。昔見たドラマでそんなことを言っていた。

理屈はどうでもいい。錯覚を想像力で補完して真実にしてしまうのが人間の持つすばらしいところなのだ。