点と点

冬休み明けにカタカナのテストがあるということで、子どもがカタカナの練習プリントをしていた。

つまらなそうにカタカナをなぞっていたので、これはいかん、何か言わねばと思い、
「カタカナをおぼえると、もっと色々なものが読めるようになるよ」
と言ってみた。
それを聞いても子どもはふうんという顔をしたきりだったので、何か例はないかと思い辺りを見たら、ヤマダ電機のチラシがあった。
パソコン、プリンター、スマホ…あるわあるわ。世界はカタカナに溢れている。例には事欠かない。

だがそこで少し考えた。
溢れているカタカナ語。それが読めるようになるのはいい。読むのはまだ易しい。
ではその先はどうだろうか。なぜあるものはカタカナで、あるものはひらがなで書かれているのか。
それを知らないと自分の文章でカタカナを使うことはできないだろう。わーいパソコンだこっちはプリンターだよとかいうより、
まずはそれ(ひらがなとカタカナ使い分けの法則)を伝えないといけないのではないかと思った。

カタカナ使用の法則。
考えればキリがないので、一番分かりやすくメジャーな「外来語の表記」で教えることにした。

僕の悪い癖かもしれないが、こういう時に直接結論をいうことはあまりしたことがない。自分で答えに辿り着いたということにしたいからだ。
なので今回も、クイズ形式にしてみた。

まず、「おまんじゅうはひらがなとカタカナのどちらで書くでしょうか?」と質問してみた。
子ども:ひらがな
僕:ではクッキーはひらがなとカタカナのどちらで書くでしょうか?
子ども:カタカナ
お、これは脈ありかもしれん、と思ってどうして?と聞いてみた。
子ども:おまんじゅうは柔らかくてクッキーは堅いから。
なるほど、そう来たか。


僕:うーん、そういう考え方もあるかもね。じゃあ、味噌はひらがな?カタカナ?
子ども:ひらがな
僕:じゃあ、クリームは?※柔らかいものを言ってみた
子ども:カタカナ
僕:どうして?
子ども:味噌汁はチャプチャプだから。
僕:?
まだ固さだと思っているようだ。


僕:じゃあ、羊羹は?(少し諦めている)
子ども:ひらがな
僕:じゃあ、ケーキは?
子ども:カタカナ
僕:どうして?
子ども:わかんない
そろそろ答えを言うことにした。
昔から日本にあるものはひらがなで、外国から来たものはカタカナで書くんだよ
と言った。


すると子どもは、あ、それなら知ってると言って本棚から「せいかつの図鑑」という本を取り出してきた。

せいかつの図鑑 (小学館の子ども図鑑プレNEO)

せいかつの図鑑 (小学館の子ども図鑑プレNEO)

えーとと言って子どもが開いたページを見ると、「おかしのはじまり」という項だった。
お菓子の起源は甘い果物
鎌倉時代に点心が中国から伝わる
安土桃山時代にカステラがポルトガルから伝わる
→明治時代にフランスからケーキなど洋菓子が伝わる
そういったことが書かれていた。

「外国が起源のものはカタカナで表記する」と「ケーキの起源は外国」。
紆余曲折あったが、子どもの中で、点と点が繋がった瞬間だった。それにちょっと感動した。「そうそう、これだよ。よく覚えてたね」
それからはカタカナの勉強はそっちのけで食べ物の起源について図鑑を読んで二人で色々な話をした。中には「(杏仁豆腐を見て)どうして中国のお菓子はカタカナで書かないの?」とか、僕にも説明が困難なものもあった(中国語と日本語は遠い親戚みたいなものなんだよと詐欺まがいの説明をした)。
「点」は多いほどいい。繋がるのはおいおいついてくる。そう願おう。

(蛇足)
実は前日にこんなことがあった。

僕が上で力説してたことも、実は分かってたんじゃないだろうか。そんな気がした。