深夜の贈り物
いつものように深夜に帰宅して子どもの様子を覗きにいくと、僕が帰った物音で目が覚めていたのか、子どもは部屋に入った僕をまぶしそうな目で見ていた。「のどがかわいちゃった」という子どもとの手をひいて冷蔵庫まで連れていき、麦茶を飲ませ、布団に入らせた。本当はまだ仕事があったが、僕もちょっと横になった。
「今日、たくさん遊んだ?」
「うん」
「たくさん勉強した?」
「うん」
「たくさんママと話した?」
「うん」
「じゃあ、今日もたくさんいい子になったね」
「うん」
「パパも話せて良かったよ」
「わたしも」
しばらく笑って僕を見ていた。楽しそうに笑うと目が細くなるのは2歳の頃から変わっていない。
「眠たくなっちゃった」
「そうか。寝なさい。明日も元気に学校いかないとね」
「うん」
「愛してるよ」
子どもはひとつ大きなあくびをして、電池が切れたように眠りについた。
しばらく寝顔を見ていた。
もし今日で死んだとしても、最期がこんなならそれほど悪くない人生だったと思えるかもな、と思った。