俺とメンチカツ

料理は僕の唯一の趣味と言ってもいい。
と言ってそれを極めようとして道具を揃えたりとか、難しい飾り切りに挑戦しようとか、そういう考えは一切ない。食べたい時に、食べたいものがなんとなく作れれば満足だ。
昨日飲みの席で話してたのだが、僕が何時間かけて作ったカレーより、レトルトのちょっと高いカレーのほうが確実に美味しい。これは悔しいとか言う以前にそうだからしょうがない。僕がいくら料理が好きだと言っても、これまでの人生でカレーを100回も作ったことがあるわけじゃない。メーカーの、消費者の嗜好を研究し試行錯誤し尽くして作ったものに、敵うはずがないのだ。べつにそれはそれでいい。



今日は、晩ご飯にメンチカツを作った。実家からじゃがいもをたくさんもらったのでコロッケにしようと思ったのだが、あまり時間がなかったので途中で変更した。
家内は合理主義者なので、メンチカツなどは作る時間と材料費を考えれば買った方がいいのではないかとよく言っている。
それも一理あると思う。それなりに味に納得できて安いのであれば、その方が確かにお得である。
ではなぜ僕は料理を作るのか。

たねを丸めた後に、そういえば溶けるチーズがあったから、「当たり」を作ろうと思ってチーズ入りを3こ作った。
一人3つずつ盛り付けてテーブルに並べた後に、「1つだけ当たりがあるからね」と子供に言ったら、「え?どれ?どれ?」と笑って選び、一口かじって「…ああ、これじゃないや…」と残念がっていたのを見ていた。1つ食べ終わり、ちょっと多いからあとひとつでいいやと言うので、「じゃあ慎重に選びなよ」と言った。僕はどっちが当たりか知っていたので「え、そっちでいいの?」とか「大きさで選んでみたら?」とか混ぜ返しながら子供が選ぶのを見ていた。
結局子供は外れをひいた。面白かったので、そっちは残していいから当たりの方を食べなよと言ったら、笑ってチーズ入りのメンチカツを食べた。
多分、こういうことが楽しいから、僕は料理を作るのだろう。