見た目は子供

メリークリスマス!

先ほど子供のランドセルを蹴倒して防犯ブザーが鳴ってしまい、止め方が分からずに1分ぐらい大音量を垂れ流してキレた家内に止めてもらってるのを子供に見られましたが、私は元気です。
(隣近所の皆様、誠に申し訳ございません)
さて昨日、子供(7歳)の洞察力に舌を巻いたというエントリを書いた。
読んでいない人のためにかいつまんで言うと、汚い大人のインチキな言葉に負けそうになった子供が、起死回生の一手で勝利を切り開いたという話だ。僕は我が子ながらその洞察力に舌を巻いた。
しかし、僕は大事なことを忘れていた。
今日はクリスマスじゃないか。
そう、去年のクリスマスにも僕は子供の洞察力に舌を巻いたのだ。


去年、子供はサンタクロースにwiiのソフトをお願いしていた。

あらかじめソフトと包装紙を買っておいて、子供が寝た後にラッピングをした。家内が、何かカードに書いてと言うのでメッセージを書いた。一年生がんばったね、とかそんな内容だった。我ながらひどい字だっだが、日本語があまり上手くないサンタクロースが書いたからというシチュエーションを脳の中で設定したので、問題無しだった。

翌朝、ツリーの下にプレゼントがあるのを見つけた子供はたいそう喜んだ。
まず一番上に置いていた封筒を開けてメッセージをちらりと見た。次に包装を開け、ゲームソフトを取り出した。

欲しかったものなので喜んでいるのはよく分かったが、サンタさん来たんだね!とか、そういった言葉はなかった。
ま、そんなもんだろう、もう一年生だし。
僕はそのくらいに思っていた。

「お手紙何て書いてあった?」と子供に訊くと、「いろいろ。来年も元気でねとか」と答えた。
僕はまあ、そんなもんか、とまた思った。

だが僕は間違っていた。
いや、その時に気がつくべきだったのかもしれない。
子供の目に浮かんだ微妙な翳りを

そのまま僕は仕事に行った。子供はもう冬休みに入っていたので、お昼休みにメールで家内に様子を訊くと、ゲーム楽しそうにやってるよと返答があった。
その日も帰るともう家内と子供は寝ていた。

奇妙なことに気が付いた。
子供の机の上に、サンタさん(つまり僕だ)からの手紙が置いてあった。
“朝は興味なさそうだったのにな。”
心暖まる文面に胸を打たれたのかしらと少しうれしくなって、手紙はそのままにしておいた。

僕はその時もまだ気が付いていなかった。

翌朝も通常通り起きた。子供はもう起きていて、Eテレを観ながらパンをかじっていた。
僕がおはようと声をかけると、ちらりとこっちを見て、おはようと答えた。
そして、パンを置くとやにわに僕に一枚のコピー用紙と鉛筆を差し出した。そしてこう言った。

「パパ、“一年生”って書いてみて」


まずい……そう来たか……


面食らうより先に思った。
子供の言葉の意味するところは明白だった。
「サンタからの手紙の筆跡鑑定」だ。

内心冷や汗をかきながらも、なんで?と訊いてみた。
いいからいいから、と笑いながら促された。

断ることはできなさそうだった。
僕は、普段書く自分の字を頭に浮かべた。どれを思い浮かべても正しいようで、それでいて間違っているようにも思えた。

あんまり時間をかけるとそれはそれで疑われるだろう。一つの字形を思い浮かべ、それに「似ないように」書いた。
ほら、と差し出すと、子供は「ほうほう」と言って紙をじっと見た。
そしてまたパンを取ってテレビに目を移した。

え?終わり?
いや、結論はどうなんだ!?

答えを訊くわけにもいかず、心の中でそう言った。子供の顔はいつもと同じように穏やかで、何も伺えなかった。

結局それ以降子供がそのことに触れることはなかった。僕もあえて詮索はしなかった。疑惑は晴れたのかもしれないし、もしくは子供はすべてを分かったうえで胸に収めているのかもしれない。
そして一年後、今年のクリスマスを迎えた。

今年はメッセージカードを書くのはやめた。
子供が指紋鑑定をしないという保証はないからだ。