父親未満

自分もそうだったが、「空気を読む子」は、「本心を押し殺す子」になる可能性がある。今日はそれを実感した日だった。

最近、土日もよく家で仕事をしている。
家内もパートで出ているので、僕が机に向かっている間、その傍らで子供はずっとゲームをしたり、DVDを観たりしている。
どこにも連れて行ってやれずすまないなという気持ちはあったが、とりあえず一人でも無聊を慰めているようには見えた。

今週は土日とも家で仕事をしていた。子供はクリスマスにサンタさんからもらったWiiのソフトをやっていた。僕はパソコンに向かいながら時おりテレビの前の子供の背中に目をやっていた。子供が上手な技を決めると二言三言声を掛け、またパソコンに向かった。今週もそんな風に週末が終わろうとしていた。

さっき布団に入った子供が「パパはまだ歯を磨かないの?」と聞いてきたので、「まだ仕事が残っているからね」とだけ答えて仕事に戻ろうとしたら、家内に呼ばれた。
「パパが話を聞いてくれないから寂しがってるよ」と言われた。

あわてて子供の元に戻り、「パパは君が一番好きだっていつも言ってるじゃないか」と笑っていったら、「でも、いつも仕事ばっかりじゃん」と言われた。

ショックだった。
自覚はしていたが、それを子供の口から「言葉」で聞いたことが。
子供はこれを「言えずに」いたのか、「言わずに」いたのか。
とにかく押し殺していたのだ。
自分のこれまでを思い返してみると、子供がそう考えるのは当たり前のことだった。
でも、それを口に出さずにいたのだ。
おそらく僕を困らせないよう(そして僕に拒絶されて自分も傷付かないように)、空気を読んでいたのだ。

「寂しい思いをさせてごめんな」
ようやくそれだけを言った。
そして、幼児の時にしてやっていたように抱き上げてゆりかごをした。
あの頃より随分大きくなり、頭も足も僕の手から大きくはみ出している。
子供は確かに成長した。そして僕はそれに甘えていた。
「空気を読む子」にさせてしまっていた。
いつも「自分のようになってほしくない」と思っていたのに。

子供が生まれた時、僕は「親になった」という感覚はなかった。
この子に「親にしてもらう」んだと思っていた。
今日もまた少し、「親」に近づくことができた。

だから今日はありがとうと言わせてくれ。