ジェノバの思い出
ジェノバ風スパゲティには、少し思い出がある。
高校生の時、母がお弁当のおかずにバジリコのスパゲッティを入れてくれた。
何の事は無い「まぜるだけ バジリコスパゲッティの素」みたいなやつで作ったものだったのだが、まだ「イタ飯」などという言葉もなかった頃、それがバジリコというものであることも知らなかった僕は、冗談抜きで「この世にこんな美味いものがあったのか!」と、いたく感動した。
数年後に大学生になり、イタリアンレストランでバイトを始めた。お店には、「ツナのジェノバ」というメニューがあった。ああなるほど、あの時食べたお弁当のスパゲッティは、これのお手軽版だったのかと腑に落ちた。
お店のジェノバ風スパゲッティは、もちろんフレッシュバジルを使い、松の実も入っている。乾燥バジリコを混ぜただけ(しかもお弁当だから冷えている)のスパゲッティとはそもそも次元が違う。
だが、あの高校生の時に僕が感じた、「こんな美味いものがあったのか!」という感動は、その本格レシピにも勝るのだから、人間とは不思議なものである。
これを食べた子供の感想はというと…まあ、「普通」だった。
スパゲッティといえば物心つくまでナポリタンとミートソースしか食べたことのなかった僕ら団塊jrとは、やはり感じ方も違うのだろう。
(それ以前に、「その程度の味だった」という可能性の方が高いか)