真心

「真心は必ず人の心を打つ」みたいなことを大人になるまでずっと信じていた。
「世の中そんなに甘くない」ともっと人生の早い段階で気がついていれば、見切りを付けることができた問題もあっただろう。

だが、そういったことを信じられる環境で育ったのはおそらく幸せなことだったんだろうと今になって思う。
僕は多分、「子供が見なくていいもの」を見ずに育ったのだ。

「子供が見なくてもいいもの」というのは、世の中に確かに存在する。
それはポルノだの暴力描写だのといった枝葉のことではない。

子供が見なくてもいいもの、それは「世界はいいものだ」という希望を失わせるような何かだ。

そういったものを見ずに大人になった。
これは幸せなことだったんだ、多分。